“カラーコピー”は避けた方が良いと思う理由-権利証のケースから-

名古屋市丸の内の司法書士 丹羽一樹 です。
先日、決済の現場で、売主様が権利証(正確に言うと「登記済証」のこと)のカラーコピーをお持ちのケースがございました。
ただし、売主様の様子から察するに、それは意図的ではなく、本物の権利証だと思ってお持ちいただいてると感じました。
そもそもですが、決済のときの司法書士の大事な確認事項の一つに、売主様から権利証をお預かりして、その権利証が、今回の対象物件に該当するものかを確認します。具体的には、記録されている受付番号を確認します。
今回の権利証は古いタイプの登記済証であり(権利証の種類についての解説はこちらをご参照ください)、受付番号を確認しようとしましたが、それよりも先に何か違和感が有りました。
「これはカラーコピーではないか?」と。
しかし、そう簡単に決めつけた発言はできないので、注意深く観察することにしました。
まず、(登記済証には「受付年月日・番号と登記済みの旨を記載した赤いスタンプ」が押されているので)赤いスタンプの箇所を消しゴムで軽く擦ってみました。本物であれば滲むはずですが、何も変化しません。
他にも、用紙の繋ぎ目にある契印がズレているのも確認しました。
そこで、「やはりカラーコピーである」と確信しました。
私には、大きな疑問が浮かび上がりました。
「そもそも、なぜ登記済証のカラーコピーなんて持っているのだろうか?何のためにカラーコピーがされたのだろうか?」と。
その書類全体を見てみると、その書類は「保証書」でした。
*「保証書」とは・・・
「保証書」とは、権利証が無い方のために、保証人2名が「(本来、権利証を提供すべき)登記名義人は、権利証が手元に無く提出できないものの、登記名義人であることに相違ない」と保証した旨の書面です。
ただし、この「保証書」という制度は、平成17年の不動産登記法改正により廃止されているので、現在は、権利証の代わりとして保証書を作成することできません。(現在の対応方法については後述いたします。)
*そもそも、権利証(登記済証や登記識別情報通知)を提出・提供すべき場合とは・・・
代表的なケースとしては、次の2点です。
①登記名義人が、不動産の所有権を他人に移す場合です。売買や贈与をする場合などが挙げられます。
→この場合、これを機に登記名義人は当該不動産の所有者ではなくなるため、当然ながら、以後、当該不動産について登記手続きをするような場面は(ほぼ)ありません。
②登記名義人が、金融機関から融資を受けるために、所有する不動産に担保(抵当権や根抵当権)を設定する場合です。
→この場合、登記名義人は、当該不動産に担保を設定するだけであり、当然ながら、引き続き所有者であるので、以後も、①や②の場面が起こり得ます。そして、①や②の場面がまた起これば、また権利証が必要になります。
つまり、過去(平成17年の不動産登記法改正以前)に上記②の場面があり、そのときに登記済証がなかった場合には、「保証書」が作られていて手元にある場合があります。
しかし、「保証書」を作成する場合に、登記済証の(カラー)コピーを付ける必要はありません。
それは当然です。登記済証が手元に無いために作るのものなので、本来なら(カラー)コピーなど用意できません。
そのため、今回、保証書に登記済証の(カラー)コピーが付いていたのが疑問でならないのです。。。
ところで、保証書が手元に残っている場合、登記済証の代わりとして使用できるでしょうか?
答えとしては、上記の①と②の場面で異なります。
②の場合、手元に残っている保証書は、登記済証の代わりとして使用ができます。
しかし、①の場合は、登記済証の代わりとして使用ができません。
なぜか言うと、「そのようなルールがあるから」という理由になってしまいますが、考え方としては、より重大な場面である①では、より厳格な本人確認が求められているからと言えます。
(登記手続の中で、「権利証を提出・提供すること」「権利証が無い場合の代用方法」などは、本人確認の一環のために手続上求められていることなのです。)
つまり、今回のケースは、登記済証が無く、保証書があっても使用できるケースではないため、現行制度に基づき、司法書士による「本人確認情報」を作成することにいたしました。
「本人確認情報」とは、司法書士が登記名義人本人と面談し、本人の情報や不動産を取得した経緯など諸々と質問をし、「権利証が無いものの、確かに不動産の所有者であることを確認できる」という旨を記録する書類です。
ちなみに、この「本人確認情報」の作成のため面談をする際、いくつか誤解を受けることがあります。
Q1 「権利証を失くしたけど、司法書士が権利証を作ってくれるんですよね?」
A 「本人確認情報」は、権利証の代わりではありません。また、以前の制度である「保証書」のように何度も使用できるものではなく、一度の登記手続限りのものとなります。
登記手続の場面でしか作成ができないので、「とりあえず本人確認情報を作っておく」ということはできません。
ちなみに、「本人確認情報」はその登記手続を担当する司法書士が作成する必要があります。
Q2「色々と質問してくるけど、登記簿見れば分かることでしょ」
A 司法書士が質問をする理由は、答えを知りたいのではなく、「本人が答えられるか」を一番気にしているからです。そのため、周囲の方が答えようとしたり、同席している不動産業者の方が答えようとした場合には、それを止めてもらうようにしています。
ただし、不動産を取得した経緯について、全く正確な回答がないといけないという訳ではありません。かなり昔のことであれば、正確に憶えていなくても何も怪しくないので、分かる範囲でお答えいただければ問題ございません。
以上が、権利証が無い場合の登記手続きの話です。
ただ、少し長くなりましたが、今回お伝えしたい本題は別にございます。
それは、「カラーコピー自体、避けた方が良い」ということです。
これは、大事な“原本”があるものについてです。
“原本”とは、今回のケースのように登記済証であったり、他にも「印鑑証明書」「住民票」「戸籍謄本(抄本)」「遺言書」「遺産分割協議書」など挙げ出すとキリがないですが、このようなもののカラーコピーなど無い方が良いと思っています。
理由は、
①一見すると、本物(原本)と見分けにくい
②本物(原本)とカラーコピーを見分けるのに、時間と気力を要する
③そもそもカラーコピーを本物(原本)と思い込んでしまう
(今回のケースが正にそうです。カラーコピーを本人がやったのなら、気付く余地はまだありますが、もし他人がやったのなら気付くのは難しいです。)
というリスクがあるからです。
私の個人的な意見ですが、「コピーは、『コピーであること』が分かるのが一番有効的」だと思っています。より本物に近い状態に見える必要性は無いかと思っています。(しかもカラーコピーは単価が高いですし)
もちろん、説明資料として使うレジュメや「何色であるかを分かる必要性があるもの」のコピーなどのときは、カラーコピーが向いていると思います。
結論としては、大事な書類ほど「原本を確実に残しておく」という意識を持って扱うことが、結果として後のトラブルを防ぐことにつながるのではないかと感じています。
