【相続人調査時の注意点 第2回 兄弟姉妹が相続人になるとき】注意すべき戸籍の確認ポイント

愛知県犬山市/名古屋市丸の内 の司法書士 丹羽一樹です。
以前、こちらの記事で触れた 【相続人調査時の注意点 第1回 4つのポイント】プロでも誤る可能性も… の中で、
今回は、
①兄弟姉妹相続の場合、被相続人の直系尊属が先に死亡しているか確認できているか(被相続人の直系卑属はいない前提)
という注意点について詳しく触れたいと思います。
1. 「兄弟姉妹が相続人になる」ケースの基本ルール
相続の順位は、民法で以下のように定められています。
1. 第一順位:直系卑属(子・孫・・・)
2. 第二順位:直系尊属(親・祖父母・・・)
3. 第三順位:兄弟姉妹
※配偶者がいれば、配偶者は常にともに相続人となります。そのため、以下配偶者の存在の説明は省きます。
つまり、兄弟姉妹が相続人になるのは「子・孫(その下も)がいない」「親・祖父母(その上も)が先に亡くなっている」場合に限られます。
そのため、単に兄弟姉妹をリストアップするだけでは不十分で、直系尊属の死亡が戸籍で確認できているかが重要になります。
2. 直系尊属の死亡確認が必要な理由
「両親が先に亡くなっていれば、兄弟姉妹が相続人」とは言い切れません。(その可能性は非常に高いですが)
直系尊属は祖父母にも遡ることに注意する必要があります。 両親が先に死亡していても、祖父母が生存していれば、相続順位は兄弟姉妹より祖父母が優先されます。
そのため、兄弟姉妹を相続人とするには、両親だけでなく祖父母の死亡も戸籍上確認する必要があります。
祖父母の死亡まで戸籍上確認ができていないと、相続手続が止まる可能性があります。
2-1. 片親だけが亡くなっている場合(直系卑属はいないとして)の相続順位の考え方
例:父が亡くなっているが、母が存命
→ 母が相続人となる。父方の祖父母が登場する訳ではない。
参照:民法第889条(本文省略)
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 (省略)
2-2.実務上、何年生まれまで死亡の確認をするか?
祖父母の生まれ年によっては、実務的には、戸籍制度上死亡の記載を確認できないこともあります。
一般的には、明治40年(1907年)生まれ以前(あるいは、そのときの日本最高齢者より年上)であれば、ほぼ死亡していると推定されるため、戸籍上の死亡確認は省略できます。
3. 兄弟姉妹相続における「実父母」「養父母」の影響
兄弟姉妹とは、実父母が同じ兄弟姉妹だけではありません。
兄弟姉妹とは
1. 実の父母が同じ兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)
2. 実父または実母が同じ兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)
3. 養子縁組によって兄弟姉妹になった者→例:養親の実子、養親を同じくする養子同士
4. 実父母・養父母の戸籍をたどる必要がある
兄弟姉妹相続の場合、実父母・養父母の出生から死亡までの戸籍をすべて収集することが必須です。
同じ実父母・養父母が生んだ子全てを把握する必要があるためです。
5. まとめ:兄弟姉妹相続で見落としがちなポイント
✅ 父母の死亡確認は当然だが、祖父母の死亡確認も必要
✅ 兄弟姉妹には「実父母が同じ者」「養父母が同じ者」も含まれる
✅ 実父母・養父母の戸籍を出生から死亡まで辿る必要がある
✅ 祖父母の死亡確認を見落とすと、手続きが止まるリスクがあるため注意
このように、相続関係のルールは意外と奥深いですので、お悩みのある方は是非お気軽にお問合せください。