【相続人調査時の注意点 第4回 養子の代襲相続について】「養子縁組前に生まれた子」は代襲相続人になる?

相続人

名古屋市中区(錦・丸の内)の司法書士 丹羽一樹です。

以前公開した【相続人調査時の注意点 第1回 全体像】では、相続人を調査する際の注意点をいくつかご紹介しました。
今回は、その中から「被相続人の養子の代襲相続」について、詳しく解説したいと思います。

養子も実子と同じく、養親の相続人となります。
それでは、その養子が養親よりも先に亡くなっていた場合、養子の子は当然に代襲相続人となるのでしょうか。
(なお「代襲相続」の詳しい解説は、【相続人調査時の注意点 第3回 「代襲相続」と「数次相続」の違い】ご参照ください。)
養子の代襲相続は、「養子縁組をした時期」と「養子の子が生まれた時期」の前後関係が重要となります。

1.代襲相続の基本ルールを確認

民法第887条第2項は、次のように定めています。

被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

例えば、

  • 被相続人A
  • 被相続人Aの子B
  • 子Bの子C

という関係で、BがAより先に亡くなっていた場合、通常はCがBを代襲してAの相続人となります。

もっとも、条文には、「被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない」というただし書があります。

養子の代襲相続では、このただし書が重要となります。

2.養子縁組によって生じる親族関係は

民法第727条は、養子縁組の効果について、

養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

と定めています。

また、民法第809条では、

養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。

とされています。

つまり、養子縁組によって、養子は養親の子としての身分を取得し、養親及びその血族との間にも、養子縁組の日から法律上の親族関係が生じることになります。

養子の代襲相続を考える際には、この「養子縁組の日から」という点が重要になります。

3.養子縁組「後」に生まれた養子の子

例えば、

①AがBと養子縁組

②その後、養子Bに子Cが生まれた

③養子BがAより先に死亡

④その後Aが死亡

という場合の被相続人Aの相続について考えます。

この場合、Cは、Bが既にAの養子となった後に出生しています。

そのため、CもBを通じてAとの間に直系血族関係を有し、Aの直系卑属に該当します。

したがって、民法第887条第2項により、CはBを代襲してAの相続人となります。

つまり、

養子縁組後に生まれた養子の子→ 代襲相続人となる

ということです。

4.養子縁組「前」に生まれていた養子の子

一方で、

①Bに子Cが生まれた

②その後、AとBが養子縁組

③養子BがAより先に死亡

④その後Aが死亡

という順番だった場合の被相続人Aの相続について考えます。

この場合、Cは、AとBとの養子縁組が成立する前から存在していたBの子です。

民法第727条による親族関係は養子縁組の日から生じるため、BとAが養子縁組したことだけを理由として、既に生まれていたCとAとの間に当然に親族関係が生じるものではありません。

この点については、大審院昭和7年5月11日判決においても、養子縁組前に生まれた養子の子と養親との間には、養子縁組による血族関係を生じないとの考え方が示されています。

そのためCは、通常、民法第887条第2項ただし書の「被相続人の直系卑属でない者」に該当し、Bを代襲してAの相続人となることはできません。

整理すると、

  • 養子縁組後に生まれた子 → 代襲相続できる
  • 養子縁組前に生まれていた子 → 原則として代襲相続できない

ということになります。

5.ただし、「養子縁組前に生まれた子=必ず代襲できない」とは限らない

ここでもう一段注意が必要です。

例えば、

①被相続人Aに実子Xがいる

②Xとその配偶者Bとの間には、(BがAの養子となる前から)子Cがいる

③その後、AはBを養子とした

④BがAより先に死亡した(Xは存命の場合として)

という場合を考えます。

Cは、BがAの養子となる前に生まれた子です。

したがって、Bとの関係だけで見れば、Aとの養子縁組によりCとAとの間に親族関係が生じたわけではありません。

しかしCは、もう一方の親である実子Xを通じて、Aの実の孫=Aの直系卑属でもあります。

このようなケースについて、大阪高等裁判所平成元年8月10日判決は、養子縁組前に出生していた子についても、被相続人の実子であるXを通じて被相続人の直系卑属に当たることなどを理由として、養子を代襲することを認めました。

また、登記実務においても、このような事例について代襲相続権を認めた先例があります(昭和35年8月5日民事甲第1997号民事局第二課長回答等)。

したがって、「養子縁組前に生まれた養子の子だから、代襲相続人ではない」と出生時期だけで機械的に判断するのも危険です。

まずは、その者が別の親族関係を通じて被相続人の直系卑属に当たらないかまで確認する必要があります。

※この点については民法第887条第2項ただし書の解釈に議論もありますので、具体的な事案については個別の親族関係を確認した上で判断する必要があります。

6.養子の子の代襲による相続権の有無のチェックはこの3点

このように、相続人となるべき養子が被相続人より先に亡くなっている場合、単に「養子に子がいるから、その子が代襲相続人」と判断することはできません。

確認すべきなのは、

  1. 養子縁組をした日はいつか
  2. 養子の子が生まれた日はいつか
  3. その子はそもそも「被相続人の直系卑属」ではないか

という点です。

つまり、養子の代襲相続人を確認する際には、養子縁組の日と養子の子の出生年月日を確認するとともに、必要に応じて養子縁組前の戸籍や、被相続人との別の親族関係を確認できる戸籍まで調査することが重要です。

7.まとめ

  • 養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得する(民法第809条)
  • 養子と養親及びその血族との親族関係も、養子縁組の日から生じる(民法第727条)
  • 養子縁組後に生まれた養子の子は、通常、養親の直系卑属となり、養子を代襲できる
  • 養子縁組前に生まれていた養子の子は、養子縁組だけでは養親の直系卑属とならないため、原則として代襲できない(民法第887条第2項ただし書)
  • ただし、別の親族関係を通じて被相続人の直系卑属に当たる場合には、代襲を認めた裁判例・登記先例がある

※なお、養子縁組前に生まれた養子の子については、兄弟姉妹の代襲相続の場合にも別の問題があります。
この点について、令和6年11月12日に最高裁判所が重要な判断を示していますので、次回の第5回では、「兄弟姉妹の代襲相続はどこまで認められるか」という問題とあわせて取り上げたいと思います。


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